少し背伸びをして
取り入れたい道具。
日本の食において、かつおのうま味は(化学調味料も含めて)ありとあらゆるところで使われています。ありとあらゆりすぎて、もはや気づきもしないくらい。
かつおのうま味は私たちが感じる”おいしい”の土台にあるようです。
そんな”おいしさの土台”に手間をかけて向き合ったら、その上に建てるお料理への姿勢も少しばかり変わるかもしれません。
出汁単体の味は、もしかしたら市販の出汁パックと違いが分からないかもしれませんが、土台を自分の手で作ったという意識が、それを使って料理をつくる過程でいい作用をもたらすこともあると思うのです。(ほんとを言うと、削りたてで取る出汁はけっこう違いがわかるほどに美味しいんですよ)
とはいえ、その作業が大変過ぎたら続きませんね。
ちょうどいい削り器があるんです。
台屋さんの鰹節削り器のブランドコンセプトは「長く使えること。機能的であること。シンプルなデザイン。適正なデザイン。」という非常にシンプルながら、本当に道具に求めていることだけが詰まっています。
私(スタッフ栗山)事ですが、実は鰹節削り器を手にするのは初めてではなく、もう十年も以上前に河童橋で購入したことがあります。
ただ、歯の調整が自分では難しかったことから、何度やってもせっかく購入した鰹節が粉々になってしまい、少しおっくうになっている間に今度は鰹節本体がダメになってしまい…。を2回ほど繰り返したところで、使うのを諦めてしまったのです。
なので台屋さんの鰹節削り器を使ってみたとき、あまりの手軽さ、簡単さにそれはそれはびっくりしたのです。
これは続けられると確信しました。
職人さんが刃の調整はもちろんのこと、なんと実際に試し削りまでしっかり行ってから発送をしてくれるので、最初の調整が不要。開封後すぐに使えちゃうんです。
本当は一回分ずつ削るのがフレッシュで美味しい出汁が出る気がしますが、ちょっと削りすぎてしまっても全然大丈夫。
我が家はジップロックに入れて、冷蔵保存していますが、そのまま食べても美味しいからか、そうたくさん残ることはなく結局毎回削っています。
なくてもそうは困らない鰹節ですが、いつでもあるとなったら卵かけご飯にちょっぴりかけたり、冷奴にのせてみたり、大根おろしと合わせたり。汎用性がとても高いことに気づきます。
でも一番に、削りたての鰹節が活きるのはやっぱり味噌汁。
一口飲むごとに、CMのようにため息が漏れてしまうような、暖かい汁がと共に全身にじわぁっと染み込む「うま味」を感じる瞬間は、ほっんとうに至福のひと時。
「機能的であること」を体現化した
鰹節削り器です
初めて鰹節削り器を使う方でも全く無問題、むしろ初めての方こそ使って欲しいのが台屋さん。
丁寧な使い方の説明書がありますが、イメージのしやすいようこちらでも簡単にお伝えしようと思います。
簡単ですが動画も撮ったのでそちらも見ていただけると、よりイメージがしやすいと思います。
手のひらの下のほうで鰹節を下に押しながら、勢いよくまっすぐ削ります。最初の方は両手で鰹節を持つと、力を入れやすいです。
滑り止めがついているのでそのままでも大丈夫ですが、不安な方は濡れタオルを敷いて、さらに最初のうちだけでも手袋をしておけばもっと安心です。
鰹節の向きはくびれている方が頭になるので、少し立て、やや斜めに削っていきます。
向きがわからない…という方も大丈夫!一度削ってみたら、鰹節が粉のようになってしまう(画像右参照)ので、反対向きにすればいいだけなのです。
刃の違いと、
木の違い。
刃には日本の刃物作りの名産地として知られる、新潟県与板で鍛えられたものを使用。
刃の材料である鋼には「SK材」と「青紙」の二種類がありますが、「青紙」はSK材から不純物を取り除き、タングステンやクロムを加えたもので、プロの大工も使用する本格仕様です。
「青紙」のほうはやや硬く、より尖がらせることができますし、切れ味も長持ちするそうです。
一方「SK材」はやや柔らかいため研ぎやすいですが、持続性でいうと青紙よりは劣るそうです。
とにかく一度、お手軽にはじめてみたい方は「SK材」で、やや高くても永く使うことに重きを置きたい人は「青紙」といった選び方をすれば間違いないと思います。
いつでも使えるところに置いて欲しいという願いから本体の高さはわずか5.8cm。
たしかにこのコンパクトさなら電子レンジの上、食器棚の隙間などすぐ手に取れるところに置けます。
引き出しなどをなくしたシームレスタイプのため、見た目もシンプルかつモダンなデザインに。
角のやさしい丸みも全体的な優しい雰囲気によく合っています。
さて色味の違いですが、これはブナとウォルナットという木の違いになります。
ウォルナットは、高級木材としても知られる北米産のブラックウォルナットを使用。
あまり鰹節削り器では見ない木目で、モダンなキッチンにも合わせやすいような気がします。
ブナはヨーロッパビーチという白さの際立つブナ材を削り出しているそう。
柔らかい木目が愛らしながらも、無駄のないスマートなデザインにもマッチしており、出しっぱなしにしていても様になります。
どちら無垢材のため、使えば使うほど味わい深い色合いに変化していく様子を楽しめます。
はじめてだからこそ、
一式あると安心
台屋さんのアクセサリー・メンテナンスグッズも一緒に揃えておくと、日々のお手入れも非常に楽になります。
刃の調整に使う「木づち」、細かい屑を払う「ブラシ」、小さくなった鰹節も安全に削れる「おさえ木」。
それぞれの使い方も本当に簡単で、「木づち」は刃を出したい場合は鉋刃の頭部分をとんとんと叩き、逆に出しすぎてしまったら、裏面から刃を軽く抑えつつ鉋台の頭部分を叩くだけ。
初心者のうちは刃を出しすぎてしまいがちだそうなので、刃は“新聞紙一枚分(0.05mm)”と覚えておきましょう!
鰹節は思っていた以上に箱に残ります。ひっくり返しても落ちきれないことも多いのですが、専用のブラシを使うと嘘のように綺麗になります。
また、刃に若干残った粉もさっと一撫でピカピカに。木づちやおさえ木とは異なり、必需品というわけではないですが最も出番の多い道具でもあります。
鰹節削り器の中に収納もできますが、自立できる設計になっているので、鰹節削り器の隣に置いておいても。
「おさえ木」は小さくなった鰹節を安全に削るための道具です。
裏面にはゆるく湾曲してあるシリコンゴムが貼ってあるため、しっかりグリップできます。
最後の一欠片まで安全に使い切るには、必須のアイテムです。
最後に鰹節ですが、台屋さんおすすめの「伊豆 田子節 手火山式」ものをご用意。
静岡県西伊豆町の潮風をたっぷり浴びた本枯れ節を、薪を用いた直火で燻し、熟成と乾燥を繰り返す昔ながらの製法「手火山式」で仕上げています。
「背節」と「腹節」からお選びいただけますが、削りやすさ(持ちやすさ)や、どんな料理にも合うなどの点から、はじめてなら「背節」がおすすめです。
一方腹節は脂肪分が多く、やや白濁した濃厚な出汁になる傾向があります。
風味も濃く、調味料に負けないので、だしを効かせたい料理や冷奴などにちょいがけにももってこいの存在です。
どちらも薪の火力と煙が生み出す独特の香ばしさと、深い旨味が特徴で、鰹節を削るという一手間にしっかり応えてくれます。
料理・文:Moe Kuriyama(
@moe__meshi_)
写 真 :Yuto Tenjin
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