ヒバのまな板に
拘り続けた理由。
まな板探しを始めたのは、シキとサイを開店して間もない頃のこと。
2025年で愛用歴10年を迎える、ヒバの一枚板のまな板があまりにも、本当にあまりにも素晴らしく、「この良さをお客様にも伝えたい!」という思いで探し続けること三年。
またひとつ、シキとサイで叶えたかった夢が実現してしまいました。
私がヒバの一枚板に出会ったのは、”良い包丁”を購入したタイミングでした。
「包丁に優しく、長く使えるものを」と、徹底的に調べた末にたどり着いたのが、ヒバの木を使ったまな板だったのです。
まず特筆すべきは、防カビ性の高さ。
ヒバには「ヒノキチオール」という天然成分が含まれており、これが強力な抗菌・防カビ作用を発揮します。
特に水に強く、菌やカビの繁殖を抑えるだけでなく、嫌な臭いの発生も防いでくれるため、水まわりで使うまな板としてまさに理想的な素材と言えるのです。
ヒバ特有の心地よい香りも、この「ヒノキチオール」によるもの。
10年が経った今でも水をかけると仄かに清々しい香りが漂い、ふっと気持ちが和らぐ瞬間を与えてくれます。
適度な硬さと柔らかさを併せ持つのも、ヒバならではの特性。
包丁の刃を傷めにくいだけでなく、トントンと刻むたびに心地よい弾力があります。
使いはじめは特に、その音があまりにも小さい頃憧れていた”理想の朝食風景”の音と重なり、嬉しいような、少しくすぐったいような、不思議な気持ちになったのを覚えています。
この三年間、なかなかヒバのまな板を取り扱うことが難しかったので、栗・桧・桐など他の木材のまな板も試しました。
もちろんそれぞれに良さはあり、製造元によっても仕上がりもさまざまです。
それでも、黒ずみにくさや防カビ性、水に触れた瞬間ふわりと立ちのぼるあの澄んだ木の香り…。
その心地良さを知ってしまうと、やっぱりヒバにこだわりたいという気持ちは揺らぎませんでした。
素材を活かす加工と
厚みも追求しました。
ヒバと決まればあとは加工(一枚板か集成材か)や厚みを決めるだけなのですが、これもなかなか悩ませてくるところ。
集成材とは複数の小さな木片を接着剤で張り合わせたもの。
安価で軽量という利点もありますが、”長く使う”と言う面で見ると、一枚板には敵いません。
一枚板は木の塊をそのまま切り出して作られており、継ぎ目がなく、接着剤も不使用。
そのぶん水が染み込みにくく、長年使っても反りにくいというメリットがあります。
もちろんコストは上がりますが、長く使えること・使うたびに満足感を与えてくれることを思えば、それ以上の価値があると感じています。
この木目の美しさも一枚板ならではの醍醐味。
一本の木から削り出されているからこそ、年輪や木肌の表情がそのまま活かされ、どれひとつとして同じものはありません。
食材を刻む、洗って水をかける、風通しのいい場所に立てかけて干す——。
そんな日々の動作の中でふと目に入る、自然が生み出した模様に「やっぱり美しいな」と感じる瞬間があるのも、個人的には一枚板にしてよかったと感じる理由のひとつです。
そして、一枚板の良さを最大限に活かすのが、このどっしりとした重厚感。
市販されている木のまな板の多くが約2cm前後ですが、”桧葉のまな板”はなんと3.4cm。
これほどの厚みがあると、まな板がしっかりと安定するため、食材を切る際のブレが少なく、より包丁への負担も軽減。
何より、年月とともに表面が傷んできても、削り直して使い続けることができるので、“一生もの”として長く寄り添ってくれるのです。
毎日のメンテナンスと、
数年の一度のリセット
木のまな板のメンテナンスは意外と簡単。
大切なのは使う前と後で水でしっかり濡らしてから拭き取ること。
使用前にも濡らすのは、表面に水の膜をつくることでニオイや汚れが板に浸透しにくくなる効果があるためです。
水や洗剤につけっぱなしにすると、黒ずみの原因になるのでご注意を。
殺菌をしたい場合は、水ですすいでしっかりたんぱく汚れを落とした後に、熱湯をまわしかけるのがおすすめです。
使い終わったら必ず日光の当たらない場所で保管を。
木目が縦になるよう立てかけ、できれば毎回向きを変えるとより反りにくくなります。
反ってきたなと感じても、逆の面を下にして立てかけておくと、自然に元に戻るのでそこまで神経質にならずとも大丈夫です。
万が一、黒ずみが発生してしまった場合は、粗塩や重曹を刷り込んで洗うことで落ちやすくなります。
それでも落ちにくい場合や、細かな傷が気になってきたら、カンナやサンドペーパーを用いて表面を削る(削り出し)という方法もございます。
当店にご連絡いただければ、製造元での削り直しのご案内も可能ですので、お気軽にご相談ください。
テキスト:Moe Kuriyama(
@moe__meshi_)
写 真 :Yuto Tenjin
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