手間暇かけて作られた
古くから伝わるベーシックなお椀。
ろくろ挽物で国内トップの技術を誇る石川県山中にある白鷺木工さんは、原木の加工から仕上げ挽きまでを一貫して手がけている随一の工房。
約65年前から三世代に渡り、地元の伝統工芸品である山中漆器を中心に木地屋を営んでいます。
そんな白鷺木工さんの立ち上げてたブランド「SHIRASAGI」には、様々な種類のお椀がありますが、最もベーシックな「The 椀」の形をしているのがこのサブロク椀。
サブロク椀とは三寸六分、直径10.9cmと昔から受け継がれてきたサイズのお椀。
手に持ちやすい・ほどよく汁物が盛れると実用面でも優れていますが、木取りをしやすいという利点も。
100%国内産の欅を使っているも関わらず、ここまでリーズナブルで提供できるのはこのサイズのおかげでもあります。
さらに、SHIRASAGIのお椀のすべては「縦木取り」といい、輪切りにした木の断面をカットして使用しています。
横木取りと比べると、一度に作れるお椀の数が少ないため贅沢な取り方とも言われますが、歪みが少なく、木目も均一で美しいものが多いのです。
電動ろくろを使用するとはいい、けがき(輪切りにした木を見て、お椀の形状を取る作業)、仕上挽き、漆塗りはすべて職人の手によるもの。
この漆塗りも塗って終わり、ではなく塗っては拭き取る…を4,5回繰り返すことで、木目が透けて見えるようにするそうです。
木や漆の乾燥も含めて、仕上がりまでにかかる時間はおよそ約3ヶ月。
知れば知るほどかけられた手間や時間に驚きますよね。
器やおかずに合わせて選べる
5色のバリエーション。
サブロク椀のカラーバリエーションは漆茶・漆赤・漆黒・ベージュ・グレーの5種類。
至ってふつうの、食卓にすんなりと馴染んでくれるのは漆茶。
ちょっとおめでたい席も盛り上げてくれそうなのは漆黒と漆赤のような気がします。
ベージュとグレーはモダンな印象を受けますが、和により過ぎていないこの雰囲気が、おかずを選ばず使いやすいのです。
"使い艶"について と
天然木だからこその注意点。
お手入れについてですが、電子レンジ・食洗機・オーブンは非対応になります。
また、つけ置きも控え、使用後はすぐに洗って水分を拭き取ってあげてください。このとき花ふきんなどなるべく柔らかい布を使用するのがおすすめです。
毎日使って、洗って、拭いて、を繰り返すことで漆にとっての快適な環境をキープできるだけではなく、漆の表面の粒子が削れ、独自の艶感を出すことができます。
ちなみに使い続けることで生み出される艶は「使い艶」ともいい、塗りたての漆とは一味違うそうな。
私はまだその艶に出逢えていないので、これからが楽しみです。
最後に木目について。
比較的均一な木目になりやすい「縦木取り」とはいえ木にはそれぞれに個体差があります。
同じ種類の木であっても 色味や木目が違ったり、節や傷が器の表面に表れてくることがありますが、これらは木が長い年月を過ごしてきた証です。
自然が創り出すふたつとない天然木ならではの柄を楽しんで、使い艶が出るまで愛していただけると幸いです。
料理・文:Moe Kuriyama(
@moe__meshi_)
写 真 :Yuto Tenjin
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